卸売、小売、飲食などの商品販売業は、多かれ少なかれ常に商品在庫を抱えてます。
年度末になると商品在庫は棚卸資産として評価額を計算しますが、実際にどのように計算するのか?疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
今回、この記事でわかることは以下のとおりで、棚卸資産の評価方法について知りたい方に向けた記事になります。
この記事でわかること
- 棚卸資産の評価とは何か?
- 棚卸資産の評価方法の種類
- 棚卸資産の評価方法の手続
税務会計の経験が20年以上ある筆者が経営コンサルタントの視点で、棚卸資産の評価方法の種類や特徴について解説していきます。
個人事業主として「これから開業する方」や「開業したばかりの方」でもわかるように優しい解説を心がけています。
気になる方はぜひに最後まで読んでほしい。
きっと新しい発見があります。
- 棚卸資産の評価とは?
- 棚卸資産の評価方法
- 6つの原価法の具体的な内容
- 棚卸資産の評価の税務手続き
- まとめ
棚卸資産の評価とは?
棚卸資産の評価の役割
棚卸資産の評価は、棚卸資産の評価額の算定を最終目的とします。
棚卸資産の評価額を算定するためには、実地棚卸により在庫数を、棚卸資産の評価により商品単価を確定しなくてはなりません。
棚卸資産の評価とは、商品単価をいくらにするのかを決めるための役割を担っているのです。
棚卸資産の評価額の実務
棚卸資産の評価額の実務では、在庫数と商品単価が棚卸表に集約していきます。
棚卸表で集計した全ての商品在庫の合計金額が棚卸資産の評価額となり、会計処理により最終的に「貸借対照表の商品(資産)」と「損益計算書の売上原価(費用)」に計上されます。
実務運用では、有利な評価方法で棚卸表を作成して、商品(資産)を減らし売上原価(費用)を増やすことが、節税対策のポイントになります。
棚卸資産の評価方法
原価法のしくみ
棚卸資産の評価方法には、大きく分けて原価法と低価法の2種類があります。
原価法は、商品単価の決定を目的とし、実際の評価方法は6つに分かれます。具体的には、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法の中からひとつを採用して評価していきます。
なお、原価法の詳しい内容については、「6つの原価法の具体的な内容」で解説します。
低価法のしくみ
低価法は、青色申告者だけが利用できる評価方法で、商品価値の下落による商品時価で棚卸資産を評価する方法です。
具体的には、季節性商品、型落ち商品、流行性商品などの著しく陳腐化しやすい商品を取り扱う事業者に向く評価方法。価値が下がった棚卸資産を時価で評価できるので節税効果は高い。
低価法の実務では、過去に陳腐化した商品の売買実績などに基づいて、合理的に商品時価を決めることが重要なポイントになります。
6つの原価法の具体的な内容
個別法
個別法は、商品単価が高く物流数が少ない個別性がある商品に向く評価方法です。
具体的には、宝飾品や美術品、商品としての不動産や建築物などを取り扱う事業者に向く評価方法。各商品の仕入価格を使って個別に棚卸資産の評価額を決定します。
ひとつずつ商品の仕入価格を調べるので、物流数が多い商品は作業が大変になります。
先入先出法
先入先出法は、先に仕入れた商品を先に売るという考え方に基づく評価方法です。
仕入日 | 数量 | 単価 | 合計 |
12月2日 | 15個 | 800円 | 12,000円 |
12月16日 | 20個 | 850円 | 17,000円 |
12月25日 | 10個 | 900円 | 9,000円 |
上記表のとおりに商品を仕入れて12月中に売れた商品が15個の場合、先入先出法のルールに則り12月2日の在庫15個が払い出されて、残りは全て期末在庫ということになります。
したがって、棚卸資産の評価額は12月16日の単価850円と12月25日の単価900円を使って、実地棚卸の在庫数に基づいて計算を行います。
このように先入先出法は、売れ残った商品の仕入単価から棚卸資産の評価を行うのです。
総平均法
総平均法とは、商品Aや商品Bなど種類を区別してから評価を行います。
具体的には、商品Aの期首商品棚卸高と当期仕入高を合算して、総数量で割ることによって平均単価を算定します。この平均単価が棚卸資産の評価額の算定に使われるのです。
総平均法は、一定期間を経過しないと仕入単価を算定できないデメリットを抱えています。
移動平均法
異動平均法は、商品を仕入れるたびに平均単価を計算する評価方法です。
仕入日 | 数量 | 単価 | 合計 | 平均単価 |
12月2日 | 15個 | 800円 | 12,000円 | 800円 |
12月16日 | 20個 | 850円 | 17,000円 | 828円 |
12月25日 | 10個 | 900円 | 9,000円 | 876円 |
上記表のとおりに商品を仕入れて12月中に売れた残った商品が5個の場合、移動平均法の最終平均単価876円で棚卸資産を評価するので評価額は4,380円になります。
このように移動平均法は、都度毎に平均単価を計算するので作業が煩雑になるのが欠点です。
最終仕入原価法
最終仕入原価法は、年度末から直近の仕入単価を使う評価方法です。
直近の納品書を調べるだけ仕入単価を確定できるので、誰でも簡単に棚卸資産の評価額を算定できるところに魅力があります。
なお、最終仕入原価法は、税務手続きが不要なので利用者が一番多い評価法でもあります。
売価還元法
売価還元法は、商品アイテム数が多い百貨店やスーパーなどに向く評価方法です。
具体的な評価の方法は、「期末商品棚卸高(売価)×原価率=棚卸資産の評価額」の計算式で評価額を算定します。
売価還元法は、商品アイテム数が多く商品毎の単価を調べるのが困難なときに活躍します。
棚卸資産の評価の税務手続き
棚卸資産の評価方法の届出について
棚卸資産の評価方法を採用したときは、所轄税務署で手続きが必要となります。
具体的には、所得税の棚卸資産の評価方法の届出書を期限内に提出します。ただし、最終仕入原価法は税務手続きが不要となっています。
なお、届出書の書き方について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
今回の届出と一緒に開業手続をしたい方
開業手続きがまだ済んでいない方は、freeeが提供する開業支援ソフトが便利です。開業時に必要となる税務書類を誰でも、簡単に、無料で作成することができます。
作成できる税務書類
- 個人事業の開業届出書
- 所得税の青色申告承認申請書
- 青色専従者給与に関する届出書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 上記の各控え
今回の「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」は作成できませんが、開業時における主要な税務書類は全て作成できます。もちろん利用料は無料なのでこの機会に使いましょう。
なお、freeeが提供する開業支援ソフトについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
棚卸資産の評価とは何か?
棚卸資産の評価とは、仕入単価を確定する役割を担い棚卸資産の評価額の算定が目的。実務運用では、有利な評価方法を採用することにより最終的には節税効果を発揮します。
棚卸資産の評価方法の種類
棚卸資産の評価方法には、原価法と低価法があります。
原価法は商品単価を決める目的があり、6つの原価法にはそれぞれ特徴があります。また、低価法は商品の価値下落の際に時価で評価できます。
棚卸資産の評価方法の手続
棚卸資産の評価方法を採用するときは、「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄税務署に提出します。ただし、最終仕入原価法は税務手続きは不要です。
開業手続がまだ済んでいない方
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