法人税の還付|欠損金の繰戻し還付請求を利用した資金調達の経理戦略

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今期赤字で資金繰りが厳しいわ!何か手立てはない?
法人税の還付制度を利用すれば資金調達できるよ!
Tetsu

会社経営では、大きな環境の変化により想定外の損失を被ることがある。

そして、想定外の損失は資金繰り悪化へとつながることが多い。そんな時のために国は税務救済策を準備してくれています。

それが法人税の還付制度(欠損金の繰戻しによる還付)である。

法人税の還付制度を正しく理解して上手に活用することが経理戦略となります。

資金繰りが厳しい時は法人税還付を利用しよう

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どのような状態になると法人税の還付を受けれるのかしら?
前期が黒字経営で今期が赤字になった会社が受けれるよ!
Tetsu

法人税の還付制度は欠損金の繰戻しによる還付請求することで、前期に納めた法人税(地方法人税も含む)の一部又は全部を戻してもらえる制度である。なお、欠損金とは税金上の赤字を意味します。

法人税の還付制度(欠損金の繰戻しによる還付請求)には3つの注意点があります。

3つの注意点は以下のとおり

  • 前期に法人税を納めており、今期に欠損金が発生していること
  • 法人事業税などの地方税は還付されないこと
  • 還付請求すると税務調査が実施されること

3つの注意点のうち、特に「税務調査の実施」で還付請求を躊躇される会社も多い。

しかし、資金繰りが厳しい時は迷わずに還付請求して資金調達する方が、会社の手持ち資金的にも経営者の精神的にも、有利に働くのではないかと思います。

なお、法人税還付と税務調査の関係については、後ほど本記事内で詳しくお知らせする。

それほど不安に思わなくても大丈夫です。

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税金の納付が困難!納税猶予制度を利用して資金繰り対策する経理戦略

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法人税の還付制度の仕組み

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法人税還付の仕組みを教えて!
利用要件があるから仕組みをお知らせするよ!
Tetsu

法人税還付の対象となる法人

法人税の還付制度は青色申告する中小企業に適用されるところがポイントである。

原則と特例があるのでそれぞれ適用される法人を見ていきましょう。

原則

法人税の還付が適用される法人は「青色申告書を提出する中小企業者等」が対象である。

適用される中小企業者等には以下のとおり

  • 資本金又は出資金が1億円以下の普通法人※注1
  • 公益法人等又は協同組合等
  • 許可緑地団体など法人税法以外の法律で公益法人等とみなされる法人
  • 人格のない社団

※注1 以下に該当する法人は除く

・相互会社及び外国相互会社
・大法人と完全支配関係がある普通法人
・100%グループ内の複数大法人に「発行済株式」又は「出資」の全部を保有される法人
・投資法人、特定目的会社、受託法人

特例

新型コロナ税特法で特例として適用範囲が拡大された。

令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度で生じた欠損金については、資本金1億円超から10億円以下の法人にも適用※注2されます。

※注2 以下に該当する法人は除く

・大規模法人(資本金の額が10億円を超える法人など)の100%子会社
・100%グループ内の複数大規模法人に発行済株式の全部を保有される法人

法人税の還付制度の適用要件

法人税の還付制度の提供を受けるためには3つの要件をすべて満たす必要がある

3つの要件は以下のとおり

  • 前期から当期まで連続して青色申告の確定申告書を提出していること
  • 当期の確定申告書をその提出期限までに提出していること
  • 当期の確定申告書と同時に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出すること

最初の要件は、設立年度から継続して青色申告する法人が大半なので問題ないだろう。

したがって、気をつけることは「当期の確定申告を遅れずに期限内申告すること」「当期の確定申告書の提出と一緒に還付請求すること」の2点になります。

法人税還付の計算方法

法人税の還付金額の計算方法は、以下の計算式で算定できる。

計算式


(注)当期の欠損金額の上限は、前期の所得金額までとなる。

例題

≪問題≫

前期の所得金額800万円、前期の法人税額120万円、当期の欠損金額500万円である場合、当期の還付金額はいくらになるか?

≪回答≫

答え:75万円

≪計算≫

75万円(還付金額)=120万円(前期法人税額)×500万円(当期欠損金額)÷800万円(前期所得金額)

なお、例題の当期欠損金額が1,000万円であった場合、当期欠損金額は「上記の計算式(注)」どおりに前期所得金額800万円を超えることができません。そのような場合は、上限を超えた欠損金200万円は繰越欠損金として翌期に繰り越すことになります。

法人税還付の手続方法

欠損金額が発生した事業年度の確定申告期限までに欠損金の繰戻しによる還付請求書」を所轄税務署に提出する。

また、新型コロナウイルス感染症の影響で期限までに申告や還付請求の手続が難しい場合は、その期限を個別に延長することも可能です。詳しくは所轄税務署か税理士に問い合わせしましょう。

法人税還付の会計処理と税務調査

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欠損金の繰戻しによる還付請求した後について教えて!
一連の会計処理と税務調査についてお知らせするよ!
Tetsu

法人税還付の会計処理

法人税還付の一連の会計処理は次のとおりである。

還付請求する事業年度

≪決算時≫

借方科目 金額 貸方科目 金額
未収法人税等 ○○○円 仮払法人税等 〇〇〇円
雑収入 〇〇〇円
  • 未収法人税等 ⇒ まだ貰っていない還付金の総額
  • 仮払法人税等 ⇒ 中間納付した法人税額
  • 雑収入 ⇒ 欠損金の繰戻しによる還付請求した金額

なお、雑収入は税金還付になるので、消費税の課税区分は対象外(不課税)となります。

還付入金された事業年度

≪還付金入金時≫

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 ○○○円 未収法人税等 〇〇〇円
雑収入 〇〇〇円
  • 普通預金 ⇒ 入金があった還付金の額
  • 未収法人税等 ⇒ 前期決算仕訳で計上した還付金の未収金額
  • 雑収入 ⇒ 還付加算金(国からの利息のようなもの)

還付金の入金時は還付金と還付加算金の金額内訳がわかりません。税務署から送られてくる「国税還付金振込通知書」の金額どおりに仕訳処理をしましょう。

なお、雑収入は「還付加算金と分かるように摘要欄に記入する」と進行期の確定申告処理がスムーズになります。また、雑収入の消費税の課税区分は対象外(不課税)となります。

法人税還付と税務調査の関係

法人税の還付制度(欠損金の繰戻しによる還付請求)を利用すると、必ず税務調査が実施されると言われている。そのため、還付制度の利用を躊躇する会社も少なくありません。

法人税法(欠損金の繰戻しによる還付)では以下のとおりに定められている。

第八十条

7 税務署長は、前項の還付請求書の提出があつた場合には、その請求の基礎となつた欠損金額その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした内国法人に対し、その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する。

出典:e-Gov(電子政府の総合窓口)法人税法

確かに法人税法第80条7項に調査すると規定されています。

だが、実情は大きく異なるようだ。

みなさんが想像する調査とは訪問調査ではないだろうか。実際に調査官が来社して2日間程度、根掘り葉掘り調査する。そのような調査をイメージしていると思います。

しかし、調査とは訪問調査だけではない。署内で調査する机上調査もあるのです。

還付請求の調査のほとんどが机上調査だと言われる。署内で申告内容を調査して問題がなければ還付する。仮に申告内容で気になる点があるときは、電話などで簡単な質問を受ける場合がほとんどのようです。

もちろん、100%の確率で訪問調査がないわけではない。

しかし、税務署も還付請求の全てを調査するための人員を確保できていないのも現状である。税務職員も忙しいので、よほどのことがない限り訪問調査が実施される可能性は低い。

したがって、ウワサだけを信じて還付請求を諦めるのはもったいない。

会社の資金繰りが厳しいのであれば臆さずに還付申請することをオススメします。来るかも分からない税務調査におびえるよりも、手持ち資金が増える方が経営者として気持ちが楽になるはずです。

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国税の税務調査|税務署の調査と実態とは?意外と知られてない経理知識

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法人税還付は税理士に任せましょう

法人税還付は申告期限内に「確定申告書」と「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を一緒に提出する必要がある。

法人のほとんどが税理士と契約を結んでいると思います。したがって、法人税の還付請求をする際は、税理士と相談してから手続きしてもらいましょう。

税理士に「欠損金の繰戻しによる還付請求はやめた方がいい」と言われる場合がある。

資金繰りに余裕があり翌期は黒字になる予定の会社は、還付請求せずに欠損金を繰り越す方が有利になる場合があるからです。そうしたときは、税理士からちゃんと理由を聞いて、会社にとってどちらが有利かをしっかり判断しましょう。

先に説明したとおりに還付請求による訪問調査のリスクは低い。税理士の指導のもとで健全に経理処理している会社であればほとんど問題ありません。

なので「税務調査が」と言う税理士は、ただ手続きが面倒くさいか、知識や経験が不足している可能性がある。

そのようなときは、セカンドオピニオンとして他の税理士に相談しましょう。

セカンドオピニオンで相談した税理士の方が信頼できるようであれば、税理士を変えるのも有りだと思います。会社のことを真剣に考えてくれる税理士と一緒に仕事をした方が会社も成長していくものです。

こちらの記事も参考に!

税理士の選び方は価値観が重要!税理士選びに失敗しないための経理知識

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法人税の還付(欠損金の繰戻還付)のまとめ

法人税還付(欠損金の繰戻しによる還付請求)は、前期に法人税を納めた会社が赤字になったときに初めて利用できる制度である。

今まで黒字経営をしていても、マクロ、市場、業界などの環境変化でいきなり赤字に追い込めれることがあります。

そのような状況でも当面の資金繰りに不安がない会社もあるかもしれない。

しかし、多くの企業では手持ち資金に不安を覚え、資金繰りが厳しくなっていく会社も少なくありません。そんなときの資金調達手段として「欠損金の繰戻しによる還付請求」は役に立ちます。

本記事を参考にして税理士と相談しながら上手に法人税還付を利用すること。そのことが資金繰り改善の経理戦略としての第一歩となるはずです。

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